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Design Blog 2010

What a wonderful “Design” world!

アルゴリズム

2010.5.30

波の泡.jpg 晴天のBBQで日焼けしたら、以前より健康的だと言われ、頻繁に日に当たっていたら、今度は「シミが増えるぞ」言われたので「男のシミは苦難を乗り越えた証だ!」と言い返す今日この頃。シミ?ではなく、シワだった………

 書籍「アルゴリズミック・アーキテクチュア」を読んだ。 建築や数学的な内容というよりも、デザインという広義な行為に対しての論説が多く述べられており、非常に興味深く読むことができた。

 「アルゴリズム」というのは、問題を解決するための効率的な算法を意味し、コンピュータを使ってアルゴリズムを実行させるための記述をプログラムと言う。この著書では、コンピュータを使ったデザインには「コンピュータライゼーション」と「コンピュテーション」があり、前者が「情報の入力、処理、蓄積=予測可能なプロセスのデジタル化」を主な目的としている事に対し、後者は「不確定、不明瞭、曖昧など、定義が困難な過程についての探求」が目的であり、人間の知的な機能の拡張を目指したものであるという。その知的な活動の中にアルゴリズムがあるというのである。

 前半はギリシャ系の筆者のラング(社会的に通じる言語)=主にギリシャ哲学、ギリシャ語/ラテン語からの引用が中心となって話が進んでいく。デザインを取り巻く言葉の解説が主な内容であるが、途中途中に著名建築家への実名批評があったりして、ドキッとさせらせる。中盤はプログラミングによるアルゴリズムの例が少数だが紹介されている。そしてこの書籍の最期には、筆者への疑問や反論へのQ&Aが紹介されており、とても楽しめた。筆者への問いに対し、自らの経験から述べた反論は、まさにパロール(個人的見解)であるが、コンピュータを使ったデザインへの期待、疑問、誤解、偏見が多くあることが分かる。

 私自身は日々モデリング、図面化、プレゼンテーションなどを自ら行っているが、これは上記からしてみれば、情報の入力、処理を目的とした「コンピュータライゼーション」の範疇に入るだろう。自らプログラミングを行いながらアルゴリズミックな手法を用いているわけではないが、以前知ったある数学系のソフトウェアが、多くの図形とアルゴリズムをツールとして持っており、それらを組み合わせてモデリングを行うことはある。まだ実験段階なので、なかなか実現には至っていないが、それでも表れる結果=造形に非常に大きな刺激を受けている。

 そしていま興味があるのは、「離散と連続」により、図形を生成させる方法である。非常に簡単に言えば、離散的とは連続していない、とびとびの状態を意味しており、ある空間内においての図形の配置の最適化などにも使用可能であり、時間という連続的な対象が加わることで、いろいろな組み合せを視覚化できる。その中で何らかの解答の一部を知ることができたり、毎回違う解答の中での近似値からヒントを得ることもあり、十分とは言えないが部分的には役立っているものもある。私のような数学の門外漢がアルゴリズムに興味を持ったのも、「ビジュアライゼーション(グラフィックスによる視覚化)」がきっかけであり、「コンピュータライゼーション」から「コンピュテーション」への流れは、今後さらに進むことだろう。

 そんな魅力的なアルゴリズムに夢中になっている時に、iPadが発売された。いま手元にあるiPadの可能性に夢中になっていると、指先に宿る身体的な感覚に目覚めるのである。そしてiPad上で描いた一枚のスケッチを元に、あるアルゴリズムを使ってできた作品を近々発表する予定であり、今後が非常に楽しみになってきた。もう既に秋へ向けて、新たなプロジェクトが始動している。

 その前に6月初めはインテリアライフスタイル展シーフロントミュージアムに参加する。シーフロントミュージアムは総勢10名を超えるデザイナー&学生の作品が展示され、ワークショップ「あおぞらデザインフェス」も行いますので、是非ご覧下さい。