決断力
2008.12.31
連日の忘年会から開放され、ほっと一息!と言いたいところだが、いつものごとく休みの間に山盛りの宿題が……どうせ終わりなき宿題だから、まあのんびりやろう!というのも毎年のことだなあ〜。
将棋棋士 羽生善治氏の著書「決断力」を読んでいる。 数々のタイトルを手にした超人の頭脳と精神力、そしてそのポジティブな姿勢に圧倒されてしまうのだが、読み進んでいくと、次第にその言葉の重さがズシリと体に効いてくる。デビューから20年近くもトップに立ち続ける日々というのは、まさに決断の連続なのだ。
「将棋の指し手の数は十の三十乗ほどあり、プロでさえわかっているのは、六、七パーセントぐらいと言われている。その中で棋士は指し手に自分を表現する。音楽家が音を通じ、画家が線や色彩によって自己を表現するのと同じだ。ただ、将棋は二人で指すものなので、相手との駆け引きの中で自分を表現していく」という。
そこで、デザインもまた多くの指し手の中で、デザイナー個々の表現があり、相手(クライアントや職人さん、コンペ相手)との駆け引きが必要だ。必ずしも自分の思う通りに行かないのは、相手があってからこそのもの………などと同調した気分に浸っていると、
「その意味では、相手は敵であると同時に作品の共同制作者であり、自分の個性を引き出してくれる人とも言える」
「」内は全て文中の言葉だから、今更ながら目から鱗の連続である。その他印象に残った言葉を紹介したい。
「経験は、時としてネガティブな選択のもとになる」……一般に経験は人を強くするという固定観念があるが、いろいろ考え過ぎてしまったり、おじけづいたり、迷ったり、躊躇してしまったり、ネガティブな選択をしてしまうときもあるのだ。
「守ろう守ろうとすると後ろ向きになる」……時の経過が状況を変える。今は最善だけど、それは今の時点であって、今はすでに過去。守りたければ攻めなければいけない。
「直感の七割は正しい」……データや前例に頼ると、自分の力で必死にひらめこうとしなくなる。ぎりぎりの勝負で力を発揮できる決め手は、大局観と感性のバランスだ。
「できなかったことで、画期的な何かが起こる可能性が生まれる」……違うやり方もあるのではないか、試してみようかという考え方の中で、アイデアや新しい考えも生まれる。そんな馬鹿なと思われることから創造は生まれるのだ。
「自分の得意な形に逃げない」……オールラウンドプレーヤーでありたい。あえて相手の術中にはまる中で、熟知していない戦型に挑戦したい。「あえなく撃沈」ということが多いが、先行投資のための授業料だから仕方ない。
何だか普段、学生に言ってしまうような言葉もあるが、著者に言われると自分の背筋が伸びる。しかし心に染みる言葉だなあ〜。
最後に、これだけは確信を持って言える言葉で、今年を締めくくりたいと思う。
「才能とは、継続できる情熱である」
来年も宜しくお願いいたします。