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Designer's Blog  2008

What a wonderful “Design” world!

ロンドン 
2008.09.30

exbihition.jpg 連日食べた巨大な「Fish&Chips」の油分が、まだ体から抜けきれない今日この頃。

100% Design Londonの熱気は予想以上であった。当初は「たまには抜け出して、ロンドン観光でもしよう」などと思っていたのだが、ヨーロッパ各地(名刺を見るとフランス、イタリア、スペイン、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、ロシア)から、連日多くの人が訪れるので、どんな反応があるか興味津々。よって展示会期間中はずっと自分の作品の側に立ち、通訳の学生ボランティアの方の助けを借り、片言ながらも質問に答える日々が続いた。とにかく朝から立ち続けていたので、脚が棒になり、展示会終了後の帰りにパブで一杯飲んだ後は、ホテルで即熟睡と言った感じのロンドン滞在記であった。
 それでも初ロンドン。展示会終了後はそのままバスに乗り、テムズ川周辺を散歩したり、閑静な住宅が並ぶ町並みをぶらぶらした。特にノッティングヒル周辺で見た住宅のインテリアのセンスの良さが印象的で、皆自分好みの家具や照明で窓際を演出し、あえて少しだけ室内を見せていた。また古い建物の中にモダンなインテリアが実によく似合い、同じ外観の集合住宅であっても、個々ドアの形や色、ドアノブを変えているところがまたニクい。このようなインテリアの見せ方、住まいの楽しみ方はとても新鮮だった。
 今回の展示で改めて実感したことは、イギリスはガーデニングの国ということである。実際に町中にもプライベートガーデンが多くあり、手入れの行き届いた庭を多く見かけた。
 しかしそんなことはいざ知らず、緑色に塗装し、カタログの写真撮影も自ら下町の河川敷で行った我が「マングローブチェア」を「是非私の庭に置きたいわ!」と言ってくれた御夫人がいたり、ガーデニング系の雑誌やガーデンファニチャーの製造会社の方が興味を持ってくれたりと、思わぬところで反響があったのは大きな収穫だった。 
 今回はマングローブチェアの制作を行った職人さんも同行し、お互いに大きな手応えを感じた。会期中、多くの方が座るのを見ながら、いろいろと修正点を話合い、量産化へ向けて大きく動き出した。用意した500部のカタログも、ほぼ無くなったことも嬉しかった。
 こんな刺激的な100% Design London終了後、列車に乗り、北のスコットランドへと向かった。ここでも大きな刺激があったのだが、この話は次回に。

スコットランド
2008.10.04 

グラスゴー.jpg 展示会終了後、ロンドンのイーストン駅からヴァージントレインに乗り、北のスコットランドへ向かった。中村俊輔所属の「セルティック」の本拠地「グラスゴー」まで、約5時間の列車の旅である。
 羊や牛の姿が見える牧草地の側をひたすら走るヴァージントレインの特急列車「ペンドリーノ」はとても快適だった。座席にコンセントがあるので「iPhone」やデジカメ、ビデオカメラのバッテリーの充電もばっちりで、テーブルの上でノートパソコンを使っている人も多く見かけたが、こちらは窓の外の羊に夢中。
 グラスゴーに向かった理由は「グラスゴー美術学校」を見学したかったからだ。ロンドンとはまた違った雰囲気の古い街並みを歩き、坂の上にある学校を訪れた。
 この学校の卒業生でもあるチャールズ・レニー・マッキントッシュの建築で有名な「グラスゴー美術学校」は、1896年のコンペにより選ばれたもので、100年以上経った現在も、ほぼそのままのかたちで使用されている。この歴史ある学校の外観写真を撮りながら正面玄関へ廻り、入口階段の黒い手摺を握ると手の平が「ぬる」っとした。そこには小さく「ペンキ塗り立て」の文字が……。
 その後手を洗う間もなく、学芸員の方の解説で校内を見学できるツアーに参加した。アメリカ人の御年配の方々といっしょに、まずは巾1mを超える大きな建築模型を見ながら、建物全体の説明が行われた。多少の知識はあるものの、この時点で英語の理解度は2割弱。だが人数も少なく、学芸員の方の丁寧な説明にも助けられ、何となくだが理解できた。またマッキントッシュの造形は日本から影響を受けたものも多いということで、きものや伝統的な屋根のカタチを模した家具などを見ながら、落ち着いた雰囲気で内部を観察できた。
 窓から降り注ぐ自然光が美しい内部空間に息をのんだ。インテリアが有名な図書室のデザインも素晴らしかった。そしてデッサン用の彫刻が並ぶ廊下を学生とすれ違いながら歩き、そっと教室を覗くと、描きがけのキャンバスや作りかけの模型が無造作に置いてあり、その古い教室のドアの装飾は昔の学生の作品とのこと。ところどころ絵具が付着したドアは、歴代の学生の手から着いたものであろう。
 そんなことを思い浮かべながら歩いていると、多くの人が学び過ごしたこの建築の歴史が全身を通して伝わってくる。“若い頃こんな環境で学ぶことができたらなあ〜”と正直思ってしまった。
 翌日はグラスゴーから列車で1時間程の古都エディンバラを訪れた。石畳の道を歩き、坂の上の城から見た古都の景色は美しかった。
 以上僅か2日間のスコットランドの旅だったが、ロンドンでの疲れを癒すことができた。
 帰国翌日、時差ボケながら長時間学生のプレゼンテーションに参加した。プレゼンを聞いているうちに、グラスゴー美術学校での思い出がよみがえり、気分も高揚。コメントが随分と長くなってしまった。
 以上駆け足だったが、今回のイギリスの旅はとてもいい刺激となった。海外で自分のデザインしたモノの反応を直接見れたことは、とても励みになり、また深く考えることになったが、今は素直にもっと多くの方に見てもらいたいと思っている。そのことを考えると、じっとしていられない。
 デザイナー人生の大きな転換期となったマングローブチェアをこれからも大切に、そして大きく育てていきたいと思っている。